拡大床を使った矯正歯科治療のトラブル、その原因は?

歯科矯正のトラブル

はじめに

矯正歯科治療は、見た目の改善や咬み合わせの調整を目的とした重要な医療行為です。しかし、近年では治療によるトラブルが増えてきていると言われています。本記事では、拡大床を使用した矯正治療におけるトラブルの原因や具体的な事例を紹介し、安心して治療を受けるためのポイントを解説します。



矯正歯科治療の現状

矯正歯科治療は、歯並びや咬み合わせを改善するために多くの人に利用されています。しかし、治療を受けた患者の中には、思ったような結果が得られず、トラブルに悩まされるケースも少なくありません。特に、拡大床を使用した治療においては、安易な判断からトラブルが生じることがあります。


拡大床によるトラブルの要因

かつてよりポピュラーになってきた矯正歯科治療。しかし、その一方で、近年治療によるトラブルが目立つようになってきたといわれています。

  • 長期間治療しても、いっこうによくならない
  • 治療後、元の状態よりひどい歯並びになった

トラブルの原因は、矯正歯科のトレーニングを積んでいない歯科医師による“安易な「拡大床(かくだいしょう)」の使用”にあると警鐘を鳴らしています。

1. 拡大床とは?

拡大床は、歯列を広げるために使用される装置です。薄い入れ歯のような形状をしており、拡大ネジを回すことで歯を外側に傾斜させて広げる仕組みになっています。しかし、拡大床は万能ではなく、適応症が限られています。

「拡大装置には、

  • 自分では取りはずしができるもの
  • 拡大ネジを使うもの
  • ワイヤーの力で拡大するもの

など様々なタイプがあります。

拡大装置のひとつである拡大床とは、あごを広げるものではなく、歯を外側に傾斜させて歯を拡大させるために使うものです。

そのため適応症は限定され、どのような患者さんにも使える万能の装置では決してありません

さまざまな拡大床

さまざまな拡大床 写真提供/(株)アソインターナショナル

 

歯は独立してあるのではなく、内側からは舌が押し、外側からは頬の筋肉や唇が歯を抑えています。

こうしたバランス力学の上に歯列は成り立っているわけです。食事や会話ができるのも、歯、顎骨、筋肉、神経の4つの力が統御されているからなのです

この事実に対して、歯のみに働きかけるのが拡大床という装置です。

拡大床はあごを広げるのではなく、歯を押して外側に傾斜移動させるものであり、矯正歯科の中ではマイナーな装置という位置づけです。

 

2. 拡大床の使用による問題

拡大床の使用により、以下のような問題が発生することがあります。

  • 治療効果が得られない: 拡大床を使用しても、歯並びが改善しない場合があります。
  • 元の状態に戻る: 装置を外した後、歯が元の位置に戻ってしまうことがあります。
  • 咬み合わせが不安定になる: 歯の傾斜が崩れることで、咬み合わせが不安定になることがあります。

これらの問題は、拡大床の安易な使用が原因であると指摘されています。


不適切な治療の背景

不適切な矯正治療の背景には、経験不足の歯科医師による安易な判断があります。日本では、歯科医師の免許があれば矯正治療を行うことができるため、専門教育を受けていない医師が治療を行うケースが増えています。このため、患者は適切な治療を受けられないリスクが高まっています。


症例紹介

4.1 A子さんの事例

A子さんは、6歳から一般歯科医のもとで拡大床を使用した治療を受けていました。しかし、8年間の治療の結果、出っ歯になり、咬み合わせが不安定な状態になってしまいました。最終的には矯正歯科専門医のもとで抜歯を伴う再治療が必要となりました。

A子さんが、一家のかかりつけであった一般歯科のもとで矯正歯科治療を始めたのは、6歳になってすぐ。あごに対して歯が大きいため、将来、歯がデコボコにならないようにとの思いからでした。

治療先の一般歯科医は「成長期の今、あごを広げておけば、この先、抜歯をしなくてもすべての歯がきれいに並ぶ」という判断のもと、拡大床の使用を勧めたといいます。

A子さんはその言葉を受け、上下の歯に取りはずしのできる拡大床をつけての治療をスタート。

そして、拡大を続けること7年7か月。その間、乳歯は永久歯に生えかわり、非抜歯のまま治療は進みましたが、上下の前歯は前に飛び出すようになり、奥歯も含めすべての歯の咬み合わせが不安定な状態に……。

A子さんは指定された装置を真面目に使い続けたにもかかわらず、矯正歯科医のもとを訪れたときには口もとはもったりとし、自然に閉じることができない状態でした。

また、歯列にはデコボコが残り、上下の前歯の根っこが歯槽骨(しそうこつ/歯を支える骨)からはみ出し、歯が外側に傾斜して咬み合わせが不安定な状態でした。
●矯正歯科受診時
矯正歯科受診時
このままではかめないばかりか、歯の寿命も短くなってしまいます。

 

4.2 B美ちゃんの事例

B美ちゃんは、6歳から5年間拡大床を使用した治療を受けましたが、犬歯が異所萌出してしまいました。最終的には、抜歯を行い、マルチブラケットによる再治療を開始しました。

B美ちゃんは、歯を抜かずに歯並びを整えるため、一般歯科のもとで6歳から約5年間、拡大床を使用した治療を受けました。その中で、あごをより効率よく広げるために、発育に合わせて拡大床を4回作り直したといいます。

その後、13歳で上あごの右側犬歯(前から3番目の歯)が本来生えるはずの場所ではなく、中切歯(前から2番目の歯)の歯肉側から生えてきてしまった(犬歯の異所萌出)ため、これまでの非抜歯治療から一転、主治医から犬歯の抜歯を提案されてしまいます。

それを不安に感じたご家族がB美ちゃんを連れて矯正歯科を受診しました。

拡大床をつける前

4つも拡大床を作り替えたことから、真面目に治療を受けていたと思われるB美ちゃん。にもかかわらず、矯正歯科に来たときには口もとは出たままでした。パノラマX線写真を撮って見ると、犬歯は切歯(1番目の歯)の横にありました。

 

4.3 C雄くんの事例

C雄くんは、9歳から拡大床を使用していましたが、反対咬合になってしまいました。最終的には、顎変形症と診断され、外科手術を併用した治療が必要となりました。

永久歯が生えるスペースを確保するため、9歳のときから5年間、一般歯科のもとで上下のあごに拡大床をつけました。その結果、上下とも、ほぼデコボコのない状態で永久歯が生えました。

しかし、拡大床の使用中に反対咬合になってしまったのです。口の中の写真を見ると、大臼歯が咬み合っていないのがわかります。そのことに疑問を抱き、14歳のとき、自ら矯正歯科を訪ねたのでした。

●拡大床使用中(12歳8か月)の歯列状態
拡大床使用中(12歳8か月)の歯列状態
このようにずれてしまった臼歯は、拡大床の使用だけでは改善できません。

また、C雄くんは下あごの成長とともに右方へのズレも認められ、正面からみて顔が非対称になってしまっています。これは治療のゴールを明確に定めないまま、安易に拡大床を使ったことによるトラブルです。


安心して治療を受けるための6つの基本

  1. 頭部X線規格写真(セファログラム)検査を行っている
  2. 精密検査を行い、それを分析・診断したうえで治療している
  3. 治療計画、治療費用について患者さんに説明をしている
  4. 治療中の転医と、その際の治療費精算まで説明している
  5. 常勤の矯正歯科医がいる
  6. 専門知識のある歯科衛生士やスタッフがいる

これらのポイントを確認することで、安心して矯正治療を受けることができます。


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まとめ

矯正歯科治療には、適切な知識と技術を持った歯科医師による治療が不可欠です。安易な治療を避けるためにも、信頼できる矯正歯科医を選ぶことが重要です。今回紹介したトラブルの事例や基本的な指針を参考に、安心して治療を受けるための情報を活用してください。

 

 

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